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沿沿岸海域の河川水関連の調査と物質輸送過程

研高解像度観測装置の開発

 沿岸海域では複雑な地形や小規模な河川からの淡水の流入により小スケールの物理現象が発生しており,これらの小スケールな現象を把握しなければ海洋環境の全体像を明らかにすることはできせん.研究室では,Masunaga and Yamazaki (2014)によって開発された曳航式の小型高解像度多項目水質観測装置YODA Profilerを用いて沿岸海域や湖沼における調査を行うことで沿岸海域の物質輸送等に係る現象の研究を行っています.YODA Profilerは水温,電気伝導度(塩分),溶存酸素,濁度,クロロフィルa(蛍光高度)を水平解像度数十m〜数百m,鉛直解像度数cmで調査することができる観測装置です.本測器はJFE Advantechから製品化されており,世界の海で広く用いられています.この観測装置を用いて,他の研究紹介で示している霞ヶ浦の水質構造大槌湾における内部潮汐の結果も取得されています.

Figure 1. YODA Profilerセンサー本体(左)と調査の様子(右)(Masunaga and Yamazaki, 2014)

河口付近の高解像計測結果

 YODA Profilerを用いた東京湾湾奥荒川調査の例をFigure 2に示す.観測は下潮時に3回実施し,下潮に伴い河川水由来の低塩分水が沖合へ広がり,それと同時に濁度や水温,植物プランクトンの分布も変化している様子を詳細に観測することが可能です.  
Figure 1. YODA Profilerセンサーを用いた調査で取得されたデータ例(Masunaga and Yamazaki, 2014)  

公開モニタリングデータを用いた沿岸域の研究

 YODA Profiler等の測器を用いて,自前で調査したデータの解析・研究だけでなく行政機関等が長期的に取得している観測データを解析した調査も行っています.東京湾の複数地点で観測されたモニタリングデータを用いた調査研究も行っており,東京湾における海水の鉛直的な混合状態の形成過程についての研究を行ってきました(到津・増永2021,到津・増永2022,渡邉ら2023).これまでの研究から,東京湾湾奥における鉛直的な物質輸送は,河川水流入による水平的な密度勾配と風から説明することが可能であり,底層で発生する貧酸素水塊の形成過程の一部を説明することがわかってきました.公開モニタリングデータを用いた調査は,霞ヶ浦や利根川においても実施しています.
 
Figure 2. 東京湾における夏季(上)と冬季(下)における平均塩分分布,及び解析に用いているモニタリング地点(赤点)(到津・増永2022).

 
Figure 3. 東京湾における解析の一例(到津・増永2021).千葉灯標における(a)溶存酸素,(b)密度,(c)浮力振動数の二乗,(d)東西風速,(e)南北風速  

数値シミュレーションを用いた河川水の輸送・拡散過程の研究

海洋観測に加えて,数値シミュレーションを用いた河川水拡散過程の研究も行っています.以下に示すアニメーションは岩手県伊大槌湾における3つの河川(鵜住居川,大槌川,小槌川)から流入した淡水の湾内での輸送拡散過程を示しています.

Video 1. 数値シミュレーションにより再現された岩手県大槌湾の塩分分布(Sasmal et al., 2018)